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Special Reproduction

特殊生殖

生殖医療用語集

①多胎妊娠

 自然、または不妊治療の結果、複数の胎児を妊娠すること。近年、不妊治療における排卵誘発剤の副作用、または体外受精(後述)の際に受精卵を数個子宮に戻すことにより、多胎が多発した。最近は多胎を防止するため、体外受精の際に子宮に戻す受精卵の数を1~2個にとどめる場合が増えている。日本産科婦人科学会(日産婦)は2008年4月、子宮へ戻す受精卵の数について「原則1個とし、35歳以上、または2回以上続けて妊娠できなかった女性などには2個戻すことも許容する」との倫理指針をまとめた。




②減胎手術(減数手術)

 多胎妊娠となった母親に対し、妊娠22週未満のうちに胎児を減らし、母子ともに安全に妊娠経過させ出産に至らせる方法。1986年に当院の根津八紘が、日本初、世界で2例目となる減胎手術に成功した。しかし、これまで堕胎罪にあたるとされ、中には不妊治療の結果やっと妊娠したにもかかわらず6~7胎妊娠し、全員中絶か全員産むかの二者択一しかなく全員中絶したというケースも数多く報告されている。いまも減胎手術は公的に認められているわけではなく、水面下でおこなう医師も多い。




③人工妊娠中絶手術

 妊娠22週未満までに「母体外に排出させる」などの人工的な方法で胎児を殺すこと。一般的呼称は「中絶」。母体保護法(1997年までは優生保護法)により、「母体の健康を著しく害するおそれのある場合」(母体側適応)には、母体保護法指定医のもとでの中絶が認められている。胎児に障害があるからなどの「胎児側適応」の中絶は不可。妊娠12週以降の中絶から届け出が必要となる。これらの条件を満たさない中絶は、刑法の「堕胎罪」に該当する。日本では年間約30万件もの中絶がおこなわれている。




④堕胎罪

 明治40年(1907年)に刑法で制定された犯罪。胎児を母親の胎内で殺すか早流産させて殺した場合に適応される。また、妊娠22週以降におこなわれた人工妊娠中絶手術についても堕胎罪が適応される。自ら堕胎した妊婦は1年以下の懲役。妊婦から依頼され堕胎した医師・助産師等は3年以上5年以下の懲役となる。




⑤日本産婦人科医会(産医会)

 産婦人科医たちの団体の一つ。かつては「日本母性保護医協会(日母)」という名称だった。人工妊娠中絶手術をおこなうには各都道府県医師会から母体保護法(かつての優生保護法)の指定医師の指定を受けることが必要だが、この際に条件となる一つが産医会での研修であり、全国の産婦人科医たちに大きな影響を及ぼしている。




⑥日本産科婦人科学会(日産婦)

 産医会(前述)と同様に産婦人科医たちの集まりで、やはり絶大な影響力を持つ。非配偶者間体外受精や代理出産、着床前診断など各種生殖医療行為について「会告」をもうけて規制している。また、各都道府県が指定する特定不妊治療費助成事業(不妊治療の患者が助成を受けられる)の実施医療機関になるには、日産婦の会員であり、一定の研修を受けて認定を受けた医師でなければならないなどの条件がある。




⑦人工授精(IUI)

 精液を採取し、女性の膣内に人工的に注入して妊娠・出産に至らせる技術。乏精子症・無精子症による不妊症に対する治療としておこなわれてきたもので、いまから200年以上前の1799年に、イギリスのハンターが配偶者間での人工授精(AIH)を成功させている。




⑧非配偶者間人工授精(AID)

 夫以外の男性の精液を使い、人工授精をおこなうこと。1884年にアメリカのパンコーストが、無精子症の夫を持つ妻に実施した。日本では戦後間もない1948年に慶應大学医学部付属病院が実施し、翌年国内初のAID児が誕生した。以後、AIDに関する取り扱いは法律でも学会の会告でも示されることはなく、現在までに1万人、水面下で実施された数も含めると3万人のAID児が生まれていると推定される。日産婦は1997年5月、このAIDを会告でようやく追認。




⑨体外受精(IVF・ ET)

 精子と卵子を採取して体外で人工的に受精させる技術(IVF)。その後、受精卵を女性の子宮に戻して(胚移植/ET)、妊娠・出産に至らせる。1978年にイギリスで、ルイーズ・ブラウンさんが世界初の体外受精児として誕生し、当時は「試験管ベイビー」と呼ばれて話題となった。日本では1983年に初めての体外受精児が生まれた。1986年、日産婦は体外受精の施設などの登録制度を開始。




⑩ICSI(顕微授精)

 顕微授精にはいくつかの方法があるが、現在多くおこなわれているのが、卵子(卵細胞質内)に注射針を刺して精子を直接注入する「ICSI」という方法。体外受精の一つではあるが、卵子を覆う膜が硬くて精子が入り込めない場合や、精子が少ない・動きが不活発などの場合に有効な技術である。1992年にベルギーのパレルモらが、このICSIによる妊娠例を報告した。日本では1992年に国内初の顕微授精児が誕生している。




⑪採精

 男性の精液・精子を体外に取り出すこと。通常はマスターベーションにより精液を採取する。  一方、乏精子症・無精子症の場合は、精巣上体から注射針で精子を吸引する方法(精巣上体精子回収術)や、精巣の組織を切り出してそこにある精子を顕微鏡で探し出す方法(精巣精子回収術)がある。なお、この回収術で採取された精子は、人工授精や体外受精ではなく、顕微授精の方法を選ぶこととなる。




⑫採卵

 排卵誘発剤を注射して、卵巣の卵子を成熟させ、排卵直前に体外に取り出す。超音波映像で卵巣を確認しながら、卵胞に採卵針を刺して卵胞液ごと卵子を吸い出し、顕微鏡で見ながら成熟卵を得る。なお、採取された卵子が使えるのは、体外受精や顕微授精の場合のみである。




⑬配偶子・胚

 「配偶子」とは精子または卵子のこと。「胚」とは受精卵を指す。




⑭妊孕性

 妊娠する可能性のこと。卵子なら受精の可能性、精子なら授精の可能性を指す。女性は加齢とともに卵子が衰え、子宮の状態も低下するなどして妊孕性が落ちる。男性は精子そのものは老化しないが、加齢とともに精子の数は減るなどして妊孕性が落ちる。




⑮受精卵のグレード

 受精卵は、状態の良いものから悪いものまでグレードⅠ~Ⅴで示される。子宮に注入する場合は、グレードの高い受精卵が選ばれる。




⑯胚移植(ET)

 体外受精や顕微授精によりできた受精卵を、子宮に注入すること。受精卵が4~8分割したあたりで実施する。




⑰非配偶者間体外受精

 夫や妻の第三者から精子または卵子の提供を受け、体外受精をおこなうこと。日産婦は会告(指針)で、第三者からの提供卵子・提供精子による体外受精を認めていないが、根津八紘は1998年、日本で初めてこの技術の実施を公表した。一方、厚生科学審議会生殖補助医療部会は2003年、非配偶者間体外受精を容認する報告書を出したが、卵子・精子提供者については「匿名の第三者」に限るとし、兄弟姉妹からの提供は「家族関係が複雑になるため当面認めず、匿名での提供で実施した後、再検討する」とした。一方、各地では水面下での実施が広がっている。




⑱JISART

 生殖補助医療を実施する医療施設が集まり2003年に設立した団体で、会員は2008年現在20施設。卵子提供による非配偶者間体外受精の実施を計画し、一時は日産婦や日本学術会議での検討結果を待とうとしたが、いずれの場においても非配偶者間体外受精に関する議論が進まなかったため、踏み切ることにした。結果2009年2月5日、友人からの卵子提供による非配偶者間体外受精で、2例の出産が実現したと公表するに至った。




⑲ターナー症候群

 女性のみに発生。正常女性の性染色体がXXであるのに対し、X染色体が1本しかないことによって起こる一連の症候群。ターナー症候群は、女性だと1000人~1500人に1人の割合で出現するとされる。低身長、二次性徴がないなどが特徴で、卵巣の瘢痕化、無月経・月経不順なども見られ不妊となる。第三者からの卵子提供による非配偶者間体外受精での妊娠・出産は可能。自然妊娠が不可能な以外は、生活は普通の人と変わらない。




⑳クラインフェルター症候群

 男性のみに発生。正常男性の性染色体がXYであるのに対し、X染色体が過剰(XXY、XXXYなど)なために起こる一連の症候群。500~1000人に1人の割合で発生する。二次性徴がないこと(声変わりがない、体毛の発生があまりない等)が主な特徴。精子の数が少なく、体外受精での妊娠は可能な場合がある。自然妊娠が困難な以外は、生活は普通の人と変わらない。




㉑早発閉経

 閉経が30歳代、早ければ20歳代で訪れるケースのこと。女性が生涯に排卵する卵の数は、自身が母親の胎内にいたときからすでに決まっており、その卵の数がわずか数十個しかないという女性もいる。早発閉経となった場合、卵子提供による非配偶者間体外受精も可能だが、一番の得策は、若いうちに結婚・妊娠・出産を済ませることである。




㉒ロキタンスキー症候群

 生まれながらに子宮頸部、子宮、卵管、膣などが欠損していること。遺伝上は女性であり、卵巣は正常なことが通例なので、代理出産での妊娠・出産は可能となる。




㉓代理出産

 病気や先天的な理由で子宮が欠損している女性に代わり、第三者の女性が妊娠、出産すること。依頼夫婦の体外受精卵を第三者の子宮で育てる方法や、依頼者(夫)の精液を第三者の女性の子宮に人工授精する方法などがある。国内では2001年に根津八紘が前者の方法での実施を公表した。代理出産は日産婦の会告では認められておらず、また厚生労働省審議会は2003年に禁止の方針をまとめている。しかし、海外を含め代理出産で子どもを得るケースが増えている。




㉔親子関係

 現行では、母子関係について「子どもを産んだ女性が母親」(1962年最高裁判例)と定義している。一方、父子関係については、民法で「子どもを産んだ女性と婚姻関係にある男性が父親だと推定される」とされている。つまり、父親と子との法的関係は、母親と子との関係があって初めて成り立つ。このため、代理出産で生まれた子は、依頼夫婦(父母)と遺伝的には親子であったとしても、母との法的関係は認められず、結果として父との法的関係も認められないことになる。なお、妻ではない女性が産んだ子は、父が認知することで父子関係が生じる。




㉕50歳以上は出産の事実確認が必要

 2002年10月に、50歳代の夫婦がアメリカで代理出産により双子を得た。しかし、日本には「母親が50歳以上の場合は、本当に本人が出産したのかという事実を確認した上で出生届けを受理する」という法務省通達があるため、代理出産であることが判明。さらに「産んだ女性が母親」という1962年最高裁判例があるため、出生届けが受理されず、2005年11月の最高裁でも親子関係が認められない結果となった。




㉖向井亜紀さん夫妻のケース

 2000年11月に子宮頚がんにより子宮全摘出手術を受けたタレントの向井亜紀さん・高田延彦さん夫妻が、2003年11月にアメリカで代理出産により双子をもうけた。しかし、「産んだ女性が母親」という1962年最高裁判例により、東京・品川区役所への出生届けが不受理に。不受理の撤回を求めて起こした裁判では、地裁で敗訴し、2006年9月の高裁では勝訴したものの、2007年3月には最高裁で出生届け不受理が確定した。




㉗日本学術会議「生殖補助医療の在り方検討委員会」

 非配偶者間体外受精や代理出産などの増加を踏まえ、厚生労働省と法務省の依頼により日本学術会議が「生殖補助医療の在り方検討委員会」を2006年12月~2008年3月に開催。主に代理出産の在り方を議論してきたが、最終報告書では「代理懐胎は原則禁止」「試行的実施(臨床試験)は認める」とされ、2008年4月16日に法務大臣と厚生労働大臣に手渡された。




㉘代理出産に関する「国民の意識調査」

 2007年3月に厚労省が実施した国民の意識調査では「妻が子どもを産めない場合に夫婦の受精卵を使って他の女性に産んでもらう代理出産」について「認めてよい」が54%と半数を占め、「認められない」(16%)、「分からない」(29.7%)を上回った。




㉙インドで代理出産

 インドで2008年夏に日本人の夫婦が、夫の精子と、匿名の女性(インド人かネパール人との報道もある)の提供卵子を用いて、インド人女性を代理母とする代理出産で女児を得た。しかし、子どもの誕生を前に夫婦は離婚し、妻が女児の引き取りを拒否。その結果、女児は無国籍になってしまいインドを出国できない状態が数ヵ月続いた。その後、女児はインド政府発行の渡航証明書と日本政府発給のビザ(査証)により日本に入国したとされる。




㉚習慣流産

 連続して3回以上流産すると「習慣流産」、2回以上は「反復流産」と呼ぶ。主な原因の一つとされるのは夫婦の染色体異常(染色体の相互転座)で、その流産率は70~90%ともいわれる。着床前診断(後述)で受精卵の染色体をチェックすることで、流産を防ぎ出産にいたることができる。流産を繰り返すと子宮の状態は悪化し、高齢にもなりさらに妊娠率が下がるので、1回でも流産したら習慣流産を疑って流産児の絨毛による染色体検査を可能にすべき。




㉛不育症

 流産だけでなく、早産や死産も繰り返す状態をいう。流産を続けて2回した場合は不育症とされるが、妊娠10カ月以上の胎児が1回でも胎内で死んだ場合も不育症と診断するときがある。




㉜染色体の数的異常(異数体)

 ヒトの染色体は通常、22対44本の常染色体(性染色体以外の染色体)と、性染色体のXX(女性)またはXY(男性)を加えて46本で成り立つが、この数が多い・少ない場合を「数的異常」または「異数体」と呼ぶ。性染色体が数的異常の場合(ターナー症候群、クラインフェルター症候群など)は妊娠が不可能または困難だが、常染色体の数的異常なら妊娠が可能な場合がある。
 なお、正常な染色体は2本で対をなし「ダイソミー」と呼ばれるが、これが1本だと「モノソミー」、3本だと「トリソミー」となる。21番染色体が1本消えずに残り、計3本(トリソミー)となるのが「ダウン症(21トリソミー)」。




㉝染色体の構造異常(転座)

 遺伝子の情報量は変わらないが染色体の位置が変わることを「構造異常」または「転座」「相互転座」と呼ぶ。この場合は、多くは妊娠しても流産し、「習慣流産」「不育症」となるので着床前診断で予防することが必要。




㉞着床前診断(PDG)

 受精卵を子宮に戻す前に、4分割~8分割した受精卵から1つの割球を取り出して染色体や遺伝上の異常がないかを調べること。1990年に報告され、以降世界中で1万人の子どもが着床前診断を経て生まれているという。習慣流産や不育症の予防に高い効果を上げ、また男女産み分け術としても使われるが、日産婦は実施を「重篤な遺伝病に限る」と事実上禁止し、2004年に国内で初めて習慣流産の患者に実施した神戸の大谷徹郎医師を除名した。2006年には根津八紘も自身の着床前診断の実施を公表(国内2番目)。日産婦は2005年、承認審査を条件に「転座が原因で流産を2回以上繰り返した場合には実施を認める」と定義を拡大した。




㉟パーコール法

 パーコール液を用い、比重の違いを利用してXとY精子を分離することで男女産み分けができるとされてきた技術。日産婦は当面自粛すべしとの方針を出していたが、2006年4月に「産み分けできる科学的根拠はない」とし、事実上解禁とした。




㊱卵子セルフバンク

 自分の卵子を採取・凍結保存すること。その後結婚して妊娠・出産を希望したら、解凍して体外受精・妊娠・出産できる。未受精卵の凍結保存技術が可能になったことで実現した。病気の治療前の女性や、結婚が遅くなりそうな女性が、健康で若いうちに自己卵子を採取・保存し、その後病気が回復したり結婚したときに使うことができる。また、卵子提供への道も開ける。卵子凍結保存に日産婦は反対の姿勢だったが、最近になり数ヵ所の施設での試験的実施を認めた。




㊲STD(性感染症)

 STDは「Sexual Transmitted Disease」の略で、性感染症のこと。感染症の種類はさまざまだが、感染経路としては性行為による感染や血液感染、出産時の母から子への感染などがある。感染症は後遺症を残して不妊の原因になったり、妊娠や出産に悪影響を及ぼす場合もある。なかでも、子宮頚がんの原因のほとんどはヒトパピローマウイルスだと分かっており、子宮頚がんになれば子宮全摘出や両側卵巣摘出に至ることもある。




㊳高齢不妊

 高齢になるほど、妊娠できる可能性は減り、妊娠したとしても出産に伴うリスクが増大する。若いうちであれば妊娠・出産できたであろう人が、高齢であるがためにそれができないケースを「高齢不妊」という。最近は晩婚化が進んだためこのカテゴリーが浮かび上がってきた。高齢不妊の増大は、少子高齢化・経済低迷を一層深刻にする恐れもあるため対策が必要な領域だ。




㊴赤ちゃんポスト

 親が養育できない新生児を匿名で託す場所(容器)の通称。望まれず生まれる子を殺害や中絶から守るため、また捨てられることで危険にさらされる命を救うために、ドイツでは全国に80ヵ所以上設置されている。2007年5月から日本でも、熊本市の慈恵病院が「こうのとりのゆりかご」としてスタートさせたが、「捨て子を容認するのか」と賛否両論を招いた。開始から2008年3月までの中間報告では17人の赤ちゃんが保護されており、預けた理由は「経済的に困難」「離婚し母子家庭」「赤ちゃんに障害がある」「両親とも外国人」など。




㊵特別養子縁組

 1982年に新設された養子制度(民法817条の2~817条の11)。それまでの一般養子制度(普通養子制度)と違い、実親との親族関係が断ち切られる。戸籍上でも、養親との関係が「長男」「次女」などと実子と同じく記載され、養子であることは一見分かりにい。しかし、入籍した旨は記載されるので、戸籍をたどれば実親がだれであったか知ることができる。原則として6歳未満の未成年者が対象で、家庭裁判所の審判が必要。




㊶国際養子縁組

 国際間で養子縁組をすること。子どもを養子として送り出す国と、受け入れる国とに分かれる傾向がある。人身売買から子どもの福祉や権利を守るために1993年には「ハーグ国際養子縁組に関する子の保護及び国際協力に関する条約」、1989年には「国連子どもの権利に関する条約」が制定され、各国はこれをもとに国際養子縁組に関する法律を整備した。しかし日本はハーグ条約についてまだ批准も同意の署名もしていないため、国際養子縁組を規定する法律も未整備であることが課題。