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Special Reproduction

特殊生殖  ー 子宮欠損症への代理出産

ガイドライン

 現在、代理出産治療の新規相談は受け付けておりませんが、引き続きみなさんのご意見、国に対する要望、当事者の声を受け付けております。こちらにお寄せください。



「代理出産」に関しましては国の法律は未だ整備されておりませんので、当病院では下記の如き当病院としてのガイドラインを策定し、患者(依頼者)ご夫婦と代理母、並びに双方のご家族にこの内容を十分了解していただいた上で、更に別紙様式に従って宣誓して戴き代理出産治療を実施します。
※「代理懐胎」という呼び名もありますが、当病院では「代理出産」と呼ぶことにします。



第一項:代理出産とは

代理出産には、下記のようにいくつかの方法があります。


1.体外受精による代理出産
1-A.依頼夫婦の受精卵を使った代理出産

依頼夫婦の精子と卵子を体外受精させてできた受精卵を、第三者の女性(代理母)の子宮に移植して子どもを得る方法。この場合、依頼夫婦と生まれた子との遺伝的つながりは保たれる。


1-B.第三者の精子または卵子を使った代理出産

依頼夫婦の精子または卵子を、第三者の卵子(代理母とは異なる女性の卵子)または精子とを体外受精させて受精卵をつくり、それを第三者の女性(代理母)に移植して子どもを得る方法。この場合依頼夫婦と生まれた子との間の遺伝的つながりは、夫婦どちらかにはあることになる。


1-C.第三者の受精卵を使った代理出産

精子も卵子も第三者のものを体外受精させて受精卵をつくり、それをさらに別の第三者の女性(代理母)に移植して、子どもを得る方法。この場合、依頼夫婦や代理母と、生まれた子との間に遺伝的つながりはない。


2.人工授精による代理出産

歴史的には最も早くからおこなわれてきた代理出産。依頼夫婦の夫の精液を、第三者の女性(代理母)の子宮に注入(人工授精)して、子どもを得る方法。この場合、子どもの遺伝上の母親は代理母となり、依頼夫婦と生まれた子との間の遺伝的つながりは、夫のみが持つ。
 以上のうち当病院では、当面は「1-A」のみをおこなうこととし、以下に述べる「代理出産」も「1-A」のみを指すことにします(そのほかについては今後の課題とします)。

第二項:実施対象となり得る方

下記のすべての条件を満たす場合を対象とします。


<依頼者>

1.婚姻を結んでいる夫婦で、妻は45歳以下の場合に限る(通常でも女性が45歳以上の場合の妊娠は皆無に近いことと、出産したとしても子どもが成人になるまでに夫婦が養育できるための体力的、経済的リスクが高いこととによる)。

2.妻が先天的もしくは後天的に子宮のない女性に限る(ロキタンスキー・キュストナー・ハウザー症候群や子宮摘出術を受けた女性など)。子宮はあるものの母体疾患等により妊娠・出産が不可能というケースの対応については、今後の課題としている。


<代理母(産みの親)>

1.当面は、依頼夫婦の妻の「実母」で、原則として60歳前後までの女性とする(代理母の健康状態により年齢は多少の幅あり)。この理由は法の整備や補償制度のない現状においてはこれが最もトラブルやストレス等を少なくすることができるとの考えからである。

2.代理母は金銭や生まれてくる子どもへの権利などを要求せず、あくまでボランティア精神で臨むもので、依頼者からの強要は受けていないことが必須条件である。


第三項:手続き

実施に至る迄に次のような事項に関し十分配慮し、慎重に手続きを進めます。

1.医師やコーディネーターは、依頼者・代理母・ご家族に対して、施術の内容について十分なインフォームド・コンセント(説明と理解と合意)をおこなう。また、施術の危険性や問題点(障害児が生まれる可能性、特に代理母が高齢である場合の体への影響など)について説明し、その場合の対応について依頼者・提供者・ご家族であらかじめ十分に話し合っていただくよう要請する。

2.当病院での代理出産は、あくまでも代理母のボランティア精神と、それを感謝する依頼夫婦との信頼関係と責任のもとで実施されることとする。依頼夫婦が代理母に金銭を提供する場合は、必要経費(診察費や交通費)や謝礼の範囲にとどめる。


第四項:親子の法的関係について

出産後は次のような手続きを踏むことになります。
1.代理出産により生まれた子どもはいったん代理母(産みの親)の子として出生届けを出し、その後に依頼夫婦の子として養子縁組をする(現行の民法や判例では子どもの母は「産んだ女性」、父は「その女性の夫」と定めている。そのため、現在はこのような対応をとらざるを得ない)。

2.ただし、最近裁判所の判断により、「普通養子制度」ではなく「特別養子制度」の適用されたケースがある。この場合、戸籍には依頼夫婦の「長男」、「長女」などと実子と同じ記載がされるので、養子であることは分かりにくくなり、また実子同様の扱いとなる。


※ガイドラインは、国の法整備や諸状況の変化などを踏まえ、当病院の倫理委員会で見直しの必要性を認めた場合は適宜改定をおこなうものとします。

1996年12月5日作成
2009年4月1日改定
2010年3月1日一部改定


心得

このたびさまざまなご事情の上に、強いご意思とご希望を持って、ご家族が一丸となって代理出産に取り組まれることと存じます。
 しかし、代理出産に関しては現在国の法律もなく、是非の議論がなされている最中であり、実施にあたっては皆様にご留意いただきたいことが多々あります。
 つきましては、「代理出産ガイドライン」と併せてこの「代理出産に対する心得」もお読みいただき、代理母となるお母様と娘さん、それを支えるご家族の方々、それぞれが代理出産に取り組むにあたっての決意と責任、さらには信頼関係についてもご確認いただきますようお願いします。  新しい尊い命を溢れる愛情を持って育てられる日を迎えられますよう心より祈念し、当病院も医療機関として全力でサポートさせていただく所存です。

1.医療の進んだ現代においても、いまだ妊娠出産には危険が伴います。代理母ご自身で自分の体を大切になさることはもちろんですが、その上でも、流産、子宮外妊娠、子宮破裂、羊水塞栓症、常位胎盤早期剥離などの重篤なリスクがあることも十分認識して代理出産に取り組むことを、ご家族でご確認ください(通常の妊娠出産においても避けられない事態は起こり得ます)。

2.万が一そのような事態が起きた際は、代理母・胎児の双方の命を救うことに全力を尽くすことは当然ですが、当院は二者択一の場合には代理母の命を最優先にさせていただきますことをご了解ください(通常の妊娠においても母体を優先します)。

3.その上でも、避けられない事態(死亡、後遺症など)が代理母に起こってしまった際を想定し、代理母ご本人の覚悟はもちろんですが、代理母と代理母のご家族に対し依頼夫婦はどのような対応をなさるかを、当事者間でお話し合いの上ご確認ください。

4.代理母の妊娠中、依頼夫婦が不慮の事故等(例えば死亡)で子どもの引き取りが不可能となった場合には、どうなさるのかを当事者間でお話し合いの上ご確認ください(人工妊娠中絶手術が許される妊娠22週未満での事故であれば妊娠中断するか、それ以後の場合なら出産し実母のご家族が引き取るか、養子縁組するか、など)

5.通常の妊娠でもあり得るように、生まれてくる子どもが、奇形児、染色体異常児、脳性小児麻痺、胎児死亡等である場合がございます。十分ご承知の上、代理出産に臨まれることをご確認ください。

6.現在代理出産については国の法律も社会のサポート体制もなく、現時点では少なくとも当病院での治療に関する限り、当病院と当事者の責任のもとでしか実施できない状況にあります。そのことを十分御承知おき下さいますようお願いいたします。

7.現行の民法や判例では、子どもの母は「産んだ女性」、父は「その女性の夫」と定めており、現在のように代理出産で子どもが生まれてくることを想定していません。
 そのため現段階では、当病院で代理出産により生まれた子どもはいったん代理母(産みの親)の子として出生届けを出し、その後に依頼夫婦の子として養子縁組するか、もしくは特別養子縁組を試みるかにならざるを得ないことをご理解ください(しかし、本来ならば「その子どもを認知した夫婦が父母である」とする民法改正が必要だと考えています)。

8.今後、前向きな法整備がなされ、国内で代理出産が公の形で認められ、生まれてくる子どもが堂々と幸せに生きていける社会になれるよう、当病院では今後もさまざまな働きかけをおこなっていく所存です。一般の方々の理解を深めてもらうためにも、代理出産当事者としての体験談や代理出産治療の事実に関して短所も全て含めて、マスコミへの取材などボランティアでご協力してくださいますようお願いいたします。そのような機会ではプライバシーを守る形での対応に限らせていただき、当病院が窓口となって、できる限りの配慮をいたします。それぞれのお立場で、できる範囲で結構ですのでよろしくお願い致します。

9.最後に、以下のことをお誓いください。
 ・代理出産を依頼する夫婦と代理母は、単に有る者が無い者に施すということではなく、ボランティア精神のもとに施すことのできる喜びと施しを受けることのできる幸せに感謝し、生まれてくる子どもの幸せのために責任をまっとうします。また、"命を授かる"ということへのすべてに対する感謝も忘れずに、真摯な気持ちで取り組みます。
 ・生まれてくる子どもに対しては理解力の持てた頃(4才~5才)に、この事実を話し、産みの親(代理母やその夫)と、実の親(依頼夫婦)との双方に対し感謝の心を忘れることのないように育てます。

以上が、当病院からの心よりのお願いです。
なお、治療に関しての不安、疑問等は遠慮なくスタッフにお伝え下さい。