HOME / 特殊生殖医療部門 / 特殊生殖 / 着床前診断 / ガイドライン
   d  d  d

Special Reproduction

特殊生殖  ー 着床前診断

ガイドライン

産婦人科界が現在認めている着床前診断の実施対象はごく限定的であり、国の法律などもありません。当病院では、下記のガイドラインを独自に定め、患者さんご夫婦にも了解し宣誓していただいた上で実施します。


第一項:方法

受精後5日〜6日目に胚盤胞に成長した細胞の一部を取り出し、染色体や特別な遺伝子における異常の有無を調べることを着床前診断と言います。この結果の下に、異常の無い胚を子宮内に戻すことにより妊娠・出産へと繋げ、子どもを手にすることができるようにしています。


第二項:適応例

1.染色体異常妊娠にて流産を繰り返す患者や高齢が故に流産頻度が高い体外受精患者が、流産防止の為に着床前診断を望む場合
 2.夫婦の一方か双方に染色体異常や性染色体に伴う遺伝性疾患があり、生まれる子どもに遺伝することを欲しない場合(保因者を除外することはできないが)
 3.染色体異常児の妊娠やその再発が懸念される患者が、そのような妊娠を望まない場合


第三項:留意点

1.人間を差別するものではない
 この方法は主として妊娠する前の染色体異常のチェックを目的としますが、すでに誕生している染色体異常児等を差別するものではありません。
 親となる夫婦の意思を尊重し、選択の自由の一つとしてこの技術は使われるべきであり、説明をした上で患者さんの自己決定を尊重するものであります。

2.男女産み分けについて
 当院では、単純に性別を選ぶための男女産み分けは一切行いません。

3.胚への操作が加わること
 かつては4〜8分割した受精卵から1個の割球を取り出し検査していましたが、現在は胚盤胞にまで成長した細胞の一部(5〜10個の細胞)を取り出し検査をしています。その結果を踏まえ、正常な胚を子宮に戻します。現在のところ全く安全であるとは言い切れませんので、その点をご了解しておいてください。尚、妊娠された場合において、心配の残る方には妊娠15週頃における羊水染色体検査をお勧めします。現在はNGSによる染色体検査を行っています。


※ガイドラインは、国の法整備や諸状況の変化などを踏まえ、また当病院の倫理委員会にて見直しの必要性を受け、適宜改定をおこなうものとします。

2007年6月5日作成
2009年4月1日改定
2015年2月1日一部改定
2016年3月15日一部改定
2019年7月1日一部改定



心得

はじめに
 着床前診断とは、受精卵が子宮に着床して妊娠が成立する前に、受精卵に染色体や遺伝子に異常が無いかどうかを調べる医療技術です。1990年に最初に報告され、以降世界中で1万人以上の子供が着床前診断を受けて誕生しています。
 即ち、着床前診断を受けることにより、重篤な遺伝性疾患を予防したり、染色体異常で着床できなかった受精卵、あるいは流産する運命にあった受精卵を調べ、目的とする受精卵だけを子宮に戻すことにより、妊娠を継続させることができるのです。中でも、最近増加傾向にある高齢不妊に対する体外受精においては、子宮内に受精卵を戻す前に着床前診断を併用することにより、未然に流産してしまうであろう卵を選択することにより、流産率を下げることができるのです。又、それ等に関する知識を得た人達は、必要に応じて着床前診断を選択する権利を持っており、それに応えようとする医師が居るならば、その医療行為を阻止する権利を何人たりとも持ち合わせてはいないのです。

1.日本における着床前診断の歩み
 2000年鹿児島大学産科婦人科学教授が着床前診断を日産婦に申請するも却下されることが公にされ、着床前診断の存在を知ることとなりました。しばらくしての2004年、読売新聞大阪支局の一方的な否定報道を受けた日産婦は、学会の禁止方針に反し施行した神戸の大谷徹郎医師を、同年4月10日をもって除名したのです(後日復帰)。
 日産婦は会の承認審査を条件に、2005年に染色体異常である転座により2回以上流産を繰り返した場合において着床前診断を許可することとなりました。しかし当院においては、「学会に患者さんの着床前診断の選択権を奪う権利は無い」との考えの下、同年2月より転座による習慣流産例を皮切りに着床前診断を開始しました。
 しかし、体外受精における流産例を減らそうとして着床前診断(PGS)を併用、その事実を公表した大谷徹郎医師を日産婦は2017年6月24日会員資格と産婦人科専門医の資格を3年間停止するという罰則を再度新たに課すこととなったのです。
 しかし、最早、着床前診断は体外受精、特に高齢不妊例にとっては必要不可欠な手段となり、水面下では今や当たり前の如く行なわれているのが現状です。当院では、院長が表5に示す如く、2010年と2013年の2回に亘る除名に次ぐ重い厳重注意処分を日産婦から受けながら、常に公に施行、現在に至っています。

2.着床前診断に関する変遷
 着床前診断は英語ではPGD(Preimplantation Genetic Diagnosis)と呼ばれていました。直訳すれば、着床前遺伝診断が本来の意味であり、実質的には重症な遺伝疾患を予防する手段としてスタートしたものと思います。そのため日産婦は重症疾患を明記し、それ以外の染色体異常に関しては禁止していたのです。
 その内、習慣流産の原因となる転座による染色体異常を夫婦の染色体検査、又は流産児の絨毛染色体検査にて診断、そのケースもやっと認めるようになりました。
 しかし、その内高齢妊婦に卵の老化に起因する染色体異常妊娠、そして流産例が多く見られるようになり、高齢不妊への体外受精にその傾向が反映されるようになったのです。  そのことを逸早く感じ取り入れたのが神戸の大谷徹郎医師で、体外受精による受精卵の染色体異常をスクリーニングする、即ちPGS(Preimplantation Genetic Screening)を一般的に施行、その結果、その効果を公にしたところ、二度に亘って学会から処分されることとなったのです。
 そのPGDは今やPGT(Preimplantation Genetic Testing:着床前遺伝試験)と言われるようになり、それも検査目的によって
 PGT−A(Preimplantation Genetic Testing for Aneuploidy−abnormal number of chromosome:染色体異数性の検査)
 PGT−M(Preimplantation Genetic Testing for Monogenic/single gene defect:単一遺伝子疾患の検査)
が行われ、日産婦が相変わらず着床前診断をコントロールしている間に、世界は発展、恩恵を受けられるはずの患者さんは無視されているのが現実と言っても良いでしょう。

3.当院における着床前診断
 2005年から始まった着床前診断は2018年までで、およそ170名に施行、80人近くの生児を得ており、又、2017年9月からは精度の高い検査法NGS法(Next Generation Sequencing)を採用してから更に高成績を収めることができるようになりました。