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Special Reproduction

特殊生殖  ー 減胎手術

取り組みと歩み

取り組みと歩み


1982年、当時不妊治療における福音ともいわれ全国的に使われだしていた排卵誘発剤によって、当院において4胎妊娠がおこってしまいました。全胎の人工妊娠中絶を考える患者さんに、せっかく授かった命だからとそのまま妊娠継続をすすめました。その結果、妊娠後期には絶対安静の状態となり、出産は大学病院と連携を取り考え得る最善の形でお任せしましたが、4人が未熟児で誕生、その内の1人が脳性小児麻痺を伴うこととなりました。これは明らかに多胎による弊害でした。
また、妊娠中の母親の状態は大きく膨らんだお腹から手足が突き出ているといった様子になり、絶対安静の入院の日々でした。医師として、とうてい容認できるものではありませんでした。
(当時は五つ子ちゃんブームなどもあり、多胎のかわいい部分ばかりがクローズアップされ、その弊害は社会の表にでていませんでした)
すべて、多胎が故に為せる業であることから、多胎をおこさないように細心の注意をはかるとともに、起こってしまった際にいかに安全に出産に至らせられるか、全胎中絶をしないでも安全にすむ方法を考えるようになりました。妊娠中の減胎法を考え、1986年に発現した4胎妊娠の際、ご両親は全胎中絶を考えられていたため、施術が万が一の際には全胎中絶をおこなうが、命を残せる方法の2胎に減胎する手術を同意のもと施行、その後無事母児共に安全に妊娠経過し、そして出産することが出来ました。

私がこの事実を報告するに先立ち、学会では6胎妊娠例の全胎児中絶例が報告されており、子供が欲しくて妊娠したケースにおいて、多胎が故に全部中絶されてしまうことに疑問を感じていたこと、また全部産んで母児に問題を残すよりはどんなにか減胎手術がベターな方策であるかと考え、私は確信を持って施行しました。
しかし、旧日母(現在の日本産婦人科医会)から、また、それに追従するように日本産科婦人科学会から「まかりならん」として、即座に減胎手術は否定されてしまいました。

「6胎を全部中絶して許され、4胎妊娠の内2人を助けて許されぬという道理はあり得ない」という、当然の考え方が通用しない産婦人科界に対し、人工妊娠中絶に抱いていた矛盾が重なり、産婦人科界のリーダー達への不信感を更に強く抱くこととなり、結局その後の私の問題提起へと続くこととなりました。

全国から当施設を訪れ減胎手術を受けられた方は現在1,000人余となり、誕生した児は約1500人となりました。



問題提起の変遷


1982 (S.57) 当院で四胎妊娠継続、出産後1児がCP(脳性小児麻痺)となったことにより、多胎妊娠・未熟児出産における母体/胎児への負荷を強く認識するようになる。
1986 (S.61) 再度当院で四胎妊娠生じる。
1986 2.4 減胎手術実施。
6.15 第71回日本産科婦人科学会関東連合地方部会で「四胎妊娠を経膣的に二児に減じ妊娠を継続させている一症例」と題し発表。
8.8 経膣分娩で二児の男の子出産。世界で2例目。
8.10 読売新聞紙面上で減胎手術について発表される。「医師A」と匿名扱いにされてしまう。内容は批判的なトーンであったが、患者さんへの配慮はなされていた。日本母性保護産婦人科医会(故 森山豊会長)より「日母医報」という小冊子上で減胎手術を否定する通報が一方的になされる。
1987 (S.62) 減胎手術二例目報道後、日母より苦言が風の便りで届く養子の特別法を成立するきっかけとなった「菊田昇」医師と同じように根津も優生保護法指定医の資格を剥奪されるのではないか、とも噂されるようになる
1993 2.8 毎日新聞に減胎手術継続の記事が出る。日母が「日母医報」を通じて再度通達をだす。優生保護法違反で堕胎罪(1907/M.40)に相当する違法行為と批判。圧力により刑事が形式上の事情聴取に来るが法を犯してはいないため罪には問われず。
1998 「減胎手術の実際」(近江出版社刊)
1998 8.29 評議会の決定により日本産科婦人科学会より除名処分を受ける(会告破りの罪)除名処分不服の訴えを起こす。5年間の法廷論争の末和解成立。2004.2.21の理事会により日本産科婦人科学会に復帰成立。
2000 3.26 日母が今まで大反対し続けてきた新家薫氏を中心に、何の予告もなしに方向転換、減胎手術容認案をだす。
2003.5 厚生科学審議会生殖補助医療部会が、減胎手術について「予防措置を講じたにもかかわらず4胎以上、やむを得ない場合は3胎以上となった場合には実施を認め得る」とした
2004.11 受精着床学会が減胎手術に関する見解を示す。(母体保護法を下に合法化する等)