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Special Reproduction

特殊生殖  ー 非配偶者間体外受精

ガイドライン

医療法人登誠会諏訪マタニティークリニック
1996年10月26日作成
2009年4月1日改定



 「非配偶者間体外受精」に関する国の法律は未整備のため、当病院では下記のガイドラインを独自に定め、患者ご夫婦とご家族、さらに精子・卵子提供者に了解し宣誓していただいた上で実施します。


第一項:非配偶者間体外受精とは

 「非配偶者体外受精」には、下記の方法があります。

1.男女のうちどちらかが配偶子(精子または卵子)がない、または自身の配偶子では妊娠・出産が不可能な場合、第三者から配偶子の提供を受けて妊娠・出産する方法
2.男女両方とも配偶子(精子も卵子も)がなく、胚(受精卵)の提供を受けて妊娠・出産する方法

 上記のうち、当院では当面「1」のみをおこなうこととし、以下述べる「非配偶者間体外受精」も「1」を指します。「2」は将来の課題とします。

第二項:実施対象となり得る方

 以下のすべての条件が満たされている場合に実施します。

<依頼者(精子・卵子の提供を受ける者)>

1.婚姻を結んでいる夫婦で、妻は45歳までの場合と限ります(通常でも女性が45歳以上の場合の妊娠は皆無に近いことと、出産したとしても子どもが成人になるまでに夫婦が養育できるか体力的・経済的にもリスクが高いと考えるためです)。
2.夫婦のうち、どちらか一方の配偶子(精子または卵子)がない、または自身の配偶子では妊娠・出産が不可能な場合に限ります。  「精子がない場合」とは:MESA(顕微鏡下精巣上体精子吸引術)、PESA(精巣上体精子吸引術)、TESE(精巣精子回収術)でも精子が採取できない場合
 「卵子がない場合」とは:先天的・後天的理由で卵巣不全・卵巣欠損で排卵がない場合(ターナー症候群、早発閉経、卵巣摘出した方など)


<精子・卵子の提供者>

1.国の法的整備がなされるまでは、精子の提供者は「依頼者(夫)の兄弟または実父」、卵子の提供者は「依頼者(妻)の姉妹」と限ることを原則とし、それが不可能な場合には、依頼者夫婦の責任のもと別の第三者からの配偶子の提供も可。その際、当病院では斡旋などは致しません。
2.原則として、すでに結婚して子どもがいる方に限ります。
3.金銭や、生まれてくる子どもへの権利などを要求せず、あくまでボランティア精神で臨む方(依頼者からの強要は受けていないこと)。


第三項:手続き

1.医師やコーディネーターは、依頼者・提供者・ご家族に対して、施術の内容について十分なインフォームド・コンセント(説明と理解と合意)をおこないます。また、施術の危険性や問題点(障害児が生まれる可能性、母体への影響など)についても説明し、その場合の対応について依頼者・提供者・ご家族であらかじめ十分に話し合っていただくよう要請します。
2.配偶子の提供・受け取りは、あくまでも提供者側のボランティア精神と、それを感謝する依頼者側との信頼関係・責任のもとで実施されることとします。依頼者が提供者に金銭を提供する場合は、必要経費(診察費や交通費)や謝礼の範囲にとどめます。
※ガイドラインは、国の法整備や諸状況の変化などを踏まえ、また当病院の倫理委員会にて見直しの必要性を受け、適宜改定をおこなうものとします。


非配偶者間体外受精に対する心得

非配偶者間体外受精に臨まれる皆様

 子どもをほしいと願いながらも精子・卵子がない、または自身の配偶子では妊娠・出産が不可能な夫婦にとって、非配偶者間体外受精は、男性の精子だけでなく女性の卵子の提供も可能である意味で画期的な技術です。また、少子化で養子縁組が困難になった現在、新しい形の養子縁組となり得る可能性を持っているという意味でも福音でしょう。ましてや、普通の養子縁組と違い、子どもの養育はお腹の中で育て、母乳哺育も可能であることから、その絆がより強まるものと考えられます。

 しかし、日本ではAID(非配偶者間人工授精)は日本産科婦人科学会が1997年に認めた一方で、非配偶者間体外受精についてはいまだ明確には認めておらず、法律などもありません。そのため、各医療機関は独自にガイドラインを作成して実施しなければならないのが現状です。   また、依頼者・提供者間の免責に関する法律などもないため、実施に際しては皆様に留意していただきたい点が多々あります。

 「非配偶者間体外受精ガイドライン」と併せて、ご夫婦や配偶子の提供者の皆様で十分にお話し合いの上、当事者間の責任のもと対応することを確認して、非配偶者間体外受精に臨んでいただきますようお願いいたします。

1.生まれてくる子の障害の可能性

 通常の妊娠でもあり得るように、生まれてくる子どもが、奇形児、染色体異常児、脳性小児麻痺、胎児死亡等である場合がございます。十分ご承知の上で臨むことをご確認ください。



2.妊娠中・出産直後に夫婦に万が一のことがあった場合

 もし夫婦の間に不測の事態が生じた場合(妊娠中に夫が死亡した、出産直後に妻が死亡した、夫婦が突然に離婚した等の場合)には、当事者間の責任のもと対応することを事前にご確認ください。



3.将来もし夫婦が離婚等した場合

 非配偶者間体外受精で子どもを得た場合、もし将来夫婦が離婚することになれば、夫婦のどちらかが養育責任を放棄し、どちらかのみに負担がかかるという恐れが、普通の離婚の場合以上に考えられます。例えば、(AIDの場合でもそうですが)提供精子により子どもを得た場合、夫が「自分の子ではない」「妻が浮気してつくった子だ」などと言いがかりをつけて養育責任を放棄し、妻だけが負担を負うことになるという恐れもぬぐい切れません。

 また、夫婦が死別した場合にも、残されたほうが子どもの養育を放棄しようとするかもしれません。

 こうした事態も想定し、夫婦の間であらかじめ十分に話し合って、子どもの幸せを第一に考えて対応方法をお考えください。



4.子どもへの告知について

 提供された配偶子で生まれたという事実を子どもに告知するかどうかについては、提供者・依頼者夫婦(親)の双方の意思も尊重しますが、やはり第一には子どもの幸せを考えてお決めください。

 なお、当院としては、もし告知をするのなら子どもが物心ついた時点でおこなうこととし、告知しないならば告知しないままで終わらせるべきと、考えます。

 AIDの例を見ていると、これまで告知しないでおきながら、夫婦が離婚した際に八つ当たり的に「実はお前は私たちの子じゃない」などと告知し、子どもに大きな精神的ショックを与えている例があります。このようなことは決してしてはなりません。「告知するなら最初から」「告知しないなら一生しない」という固い決意が必要です。

 その一方で、提供者が明らかにされないと、近親相姦が起こりかねないという心配や、子どもが出生の秘密を知ったとき自分のルーツをたどれないという問題もあります。本来はこうした情報を取り持つ公的な第三者機関(例えば法務局がその役割を担うなど)も必要かと思いますが、そうした制度がない現状で実施するには、それらの問題も考慮した上で告知する・しないを決めていただきたいと思います。



5.親子の法的関係について

 現行の民法や判例では、母は「産んだ女性」、父は「その女性の夫」と定められており、非配偶者間体外受精などの新しい生殖医療技術により子どもが生まれてくる今の状況は想定していません。当病院では現在のところ「婚姻を結んだ夫婦」にのみ非配偶者間体外受精を実施しているので生まれた子と依頼者夫婦との法的親子関係は確保できますが、今後さまざまな形の非配偶者間体外受精が認められるとするならば、将来的に民法改正などが必要と考えます。



6.後に続く方にも道が開けるよう

 現在、非配偶者間体外受精については国の法律や社会のサポート体制はなく、現時点では当病院と当事者の責任のもとでしか実施できない状況にあります。病院長以下、諏訪マタニティークリニックのスタッフ全員のサポートなくしてはこれまでも今後も続けていくことはできません。そのことを念頭においていただき、後に続く同じ状況の方々の道を閉ざすような行為は決してなさらないよう、固くお願いいたします。



7.命への感謝を持って

 配偶子の授受に感謝し、新しい命に対しても敬虔さと慈愛の心を忘れずに、真摯な気持ちで非配偶者間体外受精に取り組むことをお誓いください。



以上が、当病院からの心よりのお願いです。
なお、治療に関しての不安、疑問等は遠慮なくスタッフにお伝え下さい。