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不妊治療について

妊娠が成り立つ仕組みと不妊の原因

妊娠がなりたつ仕組み


 子供ができない原因はいろいろあります.毎月行っている,一般的な不妊検査治療に関する説明会で詳しくは話していますが,一般的な不妊検査でわかる不妊の原因は,不妊の原因全体のほんの一割未満のものしかありません.その他の原因は,一般的な検査では分かりません.しかし,子供ができなければその原因は必ずあります.今月できない原因,先月できなかった原因,先々月できなかった原因,同じ原因なのか違う原因なのかはわかりませんが,できないならその原因は必ずあります.しかし,一般的な不妊検査ではよくわからないというのが現状です.
 以下に,正常に妊娠が成り立つ過程を説明します.その過程のどの部分であっても障害を受けることにより妊娠は成り立ちません.一般的な検査では分からない原因を理解していただく上で,正常な過程を十分に知っていただくことが必要不可欠なことと考えます.

 女性より排卵された卵子と男性より射精された精子が出会って受精し,子宮内膜に着床すれば,妊娠は成立します.

 女性では,卵巣にある卵が,月経がはじまって下垂体(頭の真ん中にあるホルモンの中枢部)から出される2種類のホルモン(卵胞刺激ホルモンFSH,黄体化ホルモンLH)の影響を受けてだんだんと成熟します.月経が始まって最初のうちはFSHの影響下に成熟しはじめ,ある程度成熟がすすむとFSH,LH両方の下垂体ホルモンの刺激で成熟します.卵の成熟にしたがって,卵の周りを取り囲んでいる細胞(顆粒膜細胞)がふえはじめて,卵の周りに液体をためていくようになります(卵胞).また,この顆粒膜細胞から女性ホルモン(エストロジェン)が分泌されます.この女性ホルモンは排卵にのみ関係しているわけではなく,いろいろな働きをもっています.しかし,妊娠成立に関する目に見える働きとしては,排卵に向けて子宮内膜をだんだん厚くしていき着床環境を整え,さらに排卵日ごろになると,卵の白身に似た無色透明の糸を引くようなおりもの(頚管粘液)を産生するようにしています.卵胞が排卵に適した大きさになると,女性ホルモンが大量に分泌されて,これが引き金となって下垂体から大量のLHが分泌されます(LHサージ).このLHサージのスタートよりおよそ36時間後に,卵胞がつぶれ排卵がおきます.つぶれた卵胞から押し出された卵子は,卵管の先端の手を広げたような部分(卵管采)でまず捕獲されます.つづいて卵管の内腔に繁茂している繊毛(細かい毛の様なもの)の運動によって,卵管の膨大部と呼ばれややふくらんでいる部分に移動させられ,そこで精子がやってくるのを待ちます.一方排卵が終わった卵胞内の顆粒膜細胞は,排卵終了とともに変化して基礎体温の高温相を作る基となるホルモン(黄体ホルモン)を産生するようになります.

 男性では,精巣(睾丸)でつくられ分化し,精巣上体(副睾丸)を通過する際に成熟した精子が,性交時女性の膣の中に放出されます.運動精子は頚管粘液の中に侵入し,この中でしばらく生存します.早いものでは,射精後ほんのわずかの時間で受精の場,卵子が待ち受ける卵管に進むものもあります.

 そして,卵管膨大部で待っていた卵子に精子がたどり着き,精子の運動は活発になります.卵子には,卵細胞の周りに透明帯という丈夫な膜があり,これにより卵細胞は守られ,一挙にたくさんの精子を受け入れないようになっています.卵子にたどり着いた精子は,まず頭のキャップがはずれて,そこから透明帯を溶かす物質を放出します.さらに尻尾の運動性がものすごく亢進して,透明帯をつき破ろうとします.しかしなかなか透明帯は破られず,そのうちに卵子にとりついては討ち死にしていた精子の中に,一匹だけ透明帯を破って卵細胞に進入することができるものがあらわれます.一匹の精子を受け入れた卵子は,透明帯が変化することによって,二匹目の精子は通過できないようにしてしまいます.このようなメカニズムによって多精子受精(1つの卵子の中に2匹以上の精子が入り込んでしまうこと)をおこさずに,受精が成立し卵子は受精卵として分割を開始します.

 受精が成立した卵子(受精卵)は,約10時間後に前核と呼ばれる空胞のようなものが細胞の中にあらわれます(約10時間〜22時間後まで).通常2つの前核(卵子由来のものと精子由来のものそれぞれ1つ)が認められます.しかし多精子受精をおこした場合には空胞が3つ以上認められ,この受精卵は正常に発育することはありません.また,受精していなかった場合には,この前核が認められません.正常な受精卵は22時間後から2分割卵となり,さらに36時間後には4分割卵,48時間後には8分割卵となります.

 2分割卵 受精約24時間後(22〜44時間後)
 4分割卵 受精約36〜50時間後
 8分割卵 受精約48〜72時間後
(なお,3,5,6,7分割卵などの段階は上記の2,4,8分割卵の間に一過性に認められる状態で,異常分割ということではありません)

体外受精では採卵してから2日後に受精卵を子宮の中に戻しますが,自然妊娠の場合には,さらに卵管において分割はすすみ,桑実胚(16〜32細胞stage)(72〜96時間後),胚盤胞(110〜120時間後)をへて受精卵は子宮腔内に達し,胚盤胞は拡張し,透明帯という殻を中から突き破って,子宮内膜に接着し,着床という現象がおきます.だいたい受精後6日後のことです.一方,受精卵を受け入れる子宮内膜は,排卵までに女性ホルモンの影響を受けて増殖し厚くなり,排卵が終わった後は,黄体ホルモンの影響下に分化します.そして受精卵を受け入れやすい環境を整えながら,受精卵をまちます.

子宮内膜に接着した卵は,トロフォブラストとよばれる足をだし,子宮内膜の中に侵入を開始します.また,この細胞からHCGというホルモン(妊娠反応を陽性にするホルモン)が産生されます.そして受精後14日目ぐらい(妊娠4週)には,市販の検査薬でも妊娠反応陽性になってきます.さらに5日後くらいには超音波検査で子宮の中に胎嚢とよばれる袋が認められるようになります(妊娠4週5日).妊娠6週にはいれば,その袋の中で胎児の心臓が動いていることを,超音波検査で確認できるようになります.



不妊症の原因


 前述の,正常な妊娠が成り立つ仕組みが充分に理解できれば,不妊の原因は自ずと分かってきます.すなわち,正常な妊娠の成り立つ過程のどの部分でも障害を受けることにより,妊娠は成り立たず不妊になってしまうわけです.不妊の原因を部位別に分けてみると,以下の通りになります.

女性の原因
1) 卵子がない
2) 卵子の異常
3) 排卵障害
4) 卵管閉塞
5) 頚管粘液異常
6) 着床障害 
a) 子宮内腔
b) 内膜の異常

男性の原因
1) 精子がない
a) 造精機能障害
b) 精管閉塞
2) 性交障害
a) 勃起障害
b) 射精障害
3) 精子機能異常

 不妊の原因を,部位別に考えると以上のようになるのですが,このうちで,一般的な不妊検査でわかる項目は,わずかなものしかありません.病院,更にいうと不妊専門病院で行う検査が万能というわけではありません.この点を良くご理解いただいてから,不妊検査治療に入って下さい.