HOME / リプロダクションセンター / 不妊治療について / 腹腔鏡検査 / 腹腔鏡検査
   d  d  d

Suwa Reproduction Center

不妊治療について

腹腔鏡検査

10.腹腔鏡検査
 腹腔鏡検査とは,体の外から見てもいてもわからない不妊の原因(もちろん超音波検査,X線検査もふくみます)を調べるために,お腹の中に直接スコープを入れて,腹腔内を観察するという方法です.

A)適応
 この検査が必要な患者さんは,不妊の原因を確認したいと希望されている,以下のとうりの方々です.
1)原因不明の長期不妊
2)子宮卵管造影において,異常が認められる場合
3)クラミジア感染の既往がある場合
4)診察等により子宮内膜症が疑われる場合
5)たびたびLUF(黄体化非破裂卵胞)が認められる場合
6)早発閉経が疑われる場合
7)その他

B)検査の実際
 この検査は3−4日程度の入院が必要になります(腹腔鏡下手術をおこなった場合は,もうすこし入院期間が延長します).お腹の中にガスを送り込み(気腹),お腹を膨らませて,視野の確保をしてからおこないます.ガスによって横隔膜が押し上げられるため,しっかりした呼吸管理が必要になり,全身麻酔下でおこないます.全身麻酔とは,気管のなかに管を挿管して,そこから麻酔のガスと酸素を流し込み麻酔をかけるという方法です.
 この全身麻酔下に,臍部に1cmの切開をくわえ,鉛筆の芯程度の太さの針をお腹にさします.そこから二酸化炭素を送り込み(気腹)腹部を膨らませてから,φ10mmの管(外筒)をさし,その中にスコープをいれ,お腹の中を観察します.さらに他に1−2_所φ5mmの管をさしこみ詳しく観察します.この際,異常がある場合でも腹腔鏡下に処置ができる場合には腹腔鏡下手術に移行します(癒着剥離術,子宮内膜症病変焼灼術など).

[副作用]
1)全身麻酔に合併するトラブル
いつもは空気とか痰等しか通っていない気管のなかに管を入れる訳なので,気管が刺激されて術後,のどの痛みが出ます.またこれに伴い咳や痰が出ます.わかると思いますが,咳をする際には腹圧がかかります.普通の手術に比べたら小さいとはいえ腹腔鏡の術後にも多少なりの傷がお腹にはできているので,咳のたびに傷が痛いということがおきてしまいます.我慢していただくほかありません.
 全身麻酔というと,目が覚めないのではないか?とおそれを抱く患者さんもいらっしゃると思われます.今から20年ほど前には確かに稀にそういうケースもありました(気管のなかに挿管するチューブを食道のなかに入れてしまい,それに気がつかないでいたなど)が,現在は色々なモニターが発達してきていて異常を早く見つけることが可能になっています.また,麻酔薬も改良されてきていて副作用が減じています.これらの改良により現在は大きなトラブルはほとんどないと言っていいのではないかと思われます.

2)気腹操作および外筒挿入のさいのトラブル
 気腹とは,前述のように細い針を刺し,お腹のなかに二酸化炭素を送り込み,お腹を膨らませて観察するための視野を確保することですが,このガスが皮膚の下の組織に入り込んでしまうことがあります.これを皮下気腫といい,マイナーなトラブルですが術後皮膚に違和感が残り,時に痛みを伴うというものがあります.
 また,お腹のなかは全く見えない状態で気腹針やスコープの外筒を差し込むため,腸や胃に穴をあけてしまうことがあります.術前に色々なチェックポイントがありトラブルを避けるよう心がけていますし,私自身はこういったトラブルを起こしたことはありませんが,県内でも報告はあります.腸管穿孔あるいは胃穿孔といいます.このようなトラブルがおきた場合には,開腹手術せざるおえないこともあります.
腹腔鏡検査とはお腹に付ける傷をなるべく小さくして,コスメティックにも術後の腹腔内癒着防ぐためにも有用な方法ですが,トラブルがあった際にはそんなことは言っていられないので,お腹を大きくあけて修復手術を行う必要があります.
 一番大きなトラブルは血管穿孔といって,血管に穴をあけた場合です.教科書的には2万件に1件という報告があり,めったにおこすトラブルではありませんが,おこしてしまったら命取りになります.私自身一生かかっても2万件の腹腔鏡手術は行わないと思うので大丈夫かなとは思っていますが,2年前に県内の病院で腹腔鏡手術の際の血管穿孔によるトラブルでの死亡事故の報告がありました.
こうなったら,即お腹を大きくあけ,血管を押さえ出血を押さえ,端から縫合していく以外にありません.本当に命取りのトラブルです.病気があってのトラブルならばしょうがないこともありうるとは思いますが,不妊患者さんは子供をほしいと思っている以外は全く健康な社会生活を行っているわけで,一転して死亡ということになった際の天国と地獄は想像を絶するものがあります.

3)術操作中のトラブル
 子宮内膜症が子宮の後面にできている事が多々あります.これを焼灼する際にその付近を走行している尿管(腎臓と膀胱をつなぐ管)の損傷をおこしてしまうことがあります.このトラブルも注意していればおこさないし,滅多におきることはありませんが,まれにあるトラブルです.

[術後]
1)お腹の中に異常がなかった場合腹腔鏡検査を受けるまでと同様の治療を続けます.
2)お腹の中に異常があった場合
a)腹腔鏡検査に引き続き腹腔鏡下手術をおこない,その後治療を続ける.あるいは,自然経過の中で妊娠の成立を待ちます.
b)腹腔鏡下手術ができない場合は,
ア)後日(希望によっては腹腔鏡検査に引き続き)開腹して,形成手術をおこない,不妊治療を継続する.あるいは,自然経過の中で妊娠の成立を待ちます.
イ)体外受精をおこなう.

 腹腔鏡の術後は,以上の通りです.しかし,上にも書きましたが腹腔鏡検査はリスクもある検査です.このため,この検査を選択しようという患者さんは不妊症としてはかなり追い込まれている状態になっているわけです.このリスクを侵しても,検査をしようと決断されているわけですから.検査で異常が全くなかったときには"異常が無かったからよかったね"といって,また以前と同じ治療,タイミング療法にはなかなか戻ることができず,次のステップに足を踏み出さざるおえません(タイミング療法で妊娠しないから腹腔鏡検査を選択されたわけですから).また,腹腔鏡検査で異常があった場合には,次のステップにいくしかありません.つまり検査をして異常があっても異常が無くても,次のステップ,体外受精に進むのであれば,リスクを侵して検査することの意味はないのではないかと考えています.
 最近私は,どうしても体外受精だけはしたくない,自然妊娠をしたいと考えている患者さんのみが腹腔鏡検査をしてもいいのではないかと考えています.体外受精でもかなわないと思っておられる患者さんには腹腔鏡検査は必要ないと考えています.