卵管閉塞とは、何らかの原因で卵管の疎通性が失われ、詰まってしまった場合の疾患名です。
卵管水腫は卵管閉塞の一形態で、卵管の一番先端の卵管采という部位で閉塞が起きた場合に称される疾患名です。卵管水腫の場合、卵管の中に水が溜まり、卵管はソーセージ状に膨れ上がります。
原因
種々な原因で卵管の閉塞は起きますが、一般的には細菌(最近はクラミジア感染症が断然に多い)などによる炎症反応の結果として起きることがほとんどです。
ときには、最近の複雑な社会を反映して、前夫との間に子供をもうけたあと、避妊手術として卵管結紮術(卵管を縛って疎通性をなくす手術)を行なったが、新しい夫との間に子供がほしいと希望されるケースもあります。
検査方法
診断は通気検査、子宮卵管造影検査、腹腔鏡検査によって行ないます。しかし、通気検査では確定的な診断には至らないので、子宮卵管造影検査で確認することが必要です。
卵管の疎通性の回復をはかる手術を希望される場合には、腹腔鏡検査で肉眼的に事前に確認することが必要になることもあります。これは、手術により卵管の疎通性を回復させることが可能か否かを判断するためのものです。
治療方法
治療方法は2種類あります。マイクロサージェリー(顕微鏡下手術療法・卵管の疎通性を回復させる手術)と体外受精です。
卵管の疎通性を回復させるための手術は、太い糸での縫合では不可能なので、ごく細い糸を用いて丁寧に手術を行ないます。この糸は大変に細いので、顕微鏡(拡大鏡)を使って見ないとうまく見えません。このため、顕微鏡下に手術を行なうマイクロサージェリーが必要になります。
マイクロサージェリーの最もよい適応は、避妊手術を行なった後に再疎通を希望している場合です。周辺に炎症反応が起きていないために、手術の成功率が高くなります。しかし炎症性の卵管閉塞は、一カ所だけでなく何カ所かの閉塞部位があるため、手術を行なうと卵管が短くなってしまいます。
卵管は通過性があればいいというものではありません。受精卵は、卵管の中を送られていくときに分割が進み、子宮に戻ったとき着床できるようになっている必要があります。このためには、ある程度の長さがないと卵管としての機能がなくなってしまうのです。
卵管水腫では、卵管采の開口手術を顕微鏡下に行なうことになります。開口だけなら簡単にできますが、再閉塞をさせないための手術には技術が必要です。時間をかけ、丁寧に手術を行なわなくてはなりません。片側の卵管采開口術には、1時間〜1.5時間の手術時間が必要となります。
しかし、卵管水腫のように卵管に水が溜まった状態が長く続いている場合には、手術後に回復が思わしくない場合がほとんどです。卵管上皮の繊毛*がダメージを受けている場合がほとんどだからです。卵管の繊毛は一度ダメージを受けると、二度と再生することはありません。したがって、卵管の疎通性をマイクロサージェリーによって回復させることが可能であっても、繊毛の機能の回復はなく、妊娠には至らない場合がほとんどです。このため最近は、卵管閉塞の治療法は、体外受精が第一の選択肢ではないかと考えています。
体外受精の治療法を選択する場合でも、卵管水腫の場合には、妊娠率は低い数字にとどまってしまいます。卵管に貯留している水が子宮内に逆流して流れ落ち、子宮内に移植した受精卵を洗い流してしまうためです。そこで、このような現象を避けるため、当院では次のような施術を採用しています。
採卵の際に卵管にも針を刺し、卵管内の水を抜いてしまうか、胚盤胞移植といって採卵後5日目に胚を移植する方法です。これでも駄目なら、卵管を完全に切除してから体外受精を行なった方が妊娠率が高くなるので、この方法も考慮します。こういった工夫により、当院の卵管水腫の患者さんの体外受精での妊娠率は、他の原因で体外受精を行なっている患者さんと比べても遜色のない成績が得られています。
単なる卵管閉塞の場合には、体外受精において、特に問題はありません。
*繊毛
卵の輸送時に重要な働きをしている、卵管上皮に生えている細かい毛のようなもの。
精子は運動能力を有しているため、卵管の中を移動できます。しかし受精卵は運動能力がないため、繊毛が一方向に動くことによって、卵管内の移動を可能としています。

