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不妊治療について  ー 原因となる疾患

卵管閉塞(卵管水腫)

7.卵管閉塞(卵管水腫)
 卵管閉塞とは,何らかの原因で卵管の疎通性が失われ,詰まってしまった場合の疾患名です.卵管水腫は卵管閉塞の一形態で,卵管の一番先端の卵管采という部位で閉塞がおきた場合に称される疾患名です.卵管水腫の場合,卵管の中に水がたまり,卵管はソーセージ状に膨れ上がります.  種々な原因で卵管の閉塞はおきますが,一般的には細菌(最近はクラミジア感染症が断然に多い)などによる炎症反応の結果としておきることがほとんどです.ときには,最近の複雑な社会を反映して,前夫との間に何人かの子供をもうけたあとに避妊手術として卵管結紮術(卵管を縛って疎通性をなくす手術)を行ったが,夫婦仲が悪くなり離婚.その後再婚し新しい夫との間に子供をほしいと希望されるケースもあります.

 診断は通気検査,子宮卵管造影検査,腹腔鏡検査によって行います.しかし,通気検査では確定的な診断には至らないので,子宮卵管造影検査で確認することが必要です.さらに,その後の治療法の選択とも強く関わってくるのですが,卵管の疎通性の回復をはかる手術を希望される場合には腹腔鏡検査で肉眼的に事前に確認することが必要になることもあります.これは,手術により卵管の疎通性を回復させることが可能か否かを判断するためのものです.

 治療方法は2種類,マイクロサージェリー(顕微鏡下手術療法,卵管の疎通性を回復させる手術)と体外受精です.卵管の疎通性を回復させるための手術は太い糸での縫合では不可能なので,吹けばとんでいってしまうような細い糸を用いて丁寧に手術を行います.この細い糸は,大変に細いので顕微鏡(拡大鏡)を使って見ないとうまく見えません.このため,顕微鏡下に手術を行うというマイクロサージェリーが必要になります.マイクロサージェリーのもっともよい適応は,避妊手術を行った後に再疎通を希望している場合です.周辺に炎症反応がおきていないために,高い手術の成功率があります.しかし炎症性の卵管閉塞は,一カ所だけでなく何カ所かでの閉塞部位があるため,手術を行うと卵管の長さが短くなってしまいます.卵管は通過性があればいいというものではなく,卵管の中を受精卵が送られていくときに,受精卵は分割が進み,子宮に戻ったときには着床できるなっている必要があります.このためには,ある程度の長さがないと卵管としての機能が無くなってしまいます.また,卵管水腫では,卵管采の開口手術を顕微鏡下に行うことになります.開口だけなら素人にも簡単にできますが,再閉塞をさせないための手術は技術が必要で,片側の卵管采開口術には1時間から1.5時間の手術時間が必要となります.しかし,時間をかけ丁寧に手術を行っても,卵管水腫のように卵管に水がたまった状態が長く続いている場合には,卵管上皮の繊毛(卵の輸送時に重要な働きをしている卵管上皮に生えている細かい毛のようなもの.精子は運動能力を有しているため卵管の中を移動できるが,受精卵は運動能力がないため繊毛が一方向に動くことによって卵管内を移動することを可能としている)がダメージを受けている場合がほとんどで(一度ダメージを受けると二度と再生しないものです),卵管の疎通性をマイクロサージェリーによってなんとか回復させることが可能であっても,卵管の繊毛の機能の回復はなく妊娠にはいたらない場合がほとんどです.このため,最近は卵管閉塞の治療法は体外受精がfirst choiceではないかと考えています.体外受精の治療法を選択する場合でも,単なる卵管閉塞の場合には問題はありませんが,卵管水腫の場合には卵管に貯留している水が子宮内に逆流して流れおち,子宮内に移植した受精卵を洗い流してしまうために,妊娠率は低い数字にとどまってしまいます.そこで,このような現象を避けるため,当院では卵管水腫がある患者さんの体外受精においては,採卵の際に卵管にも針を刺し,卵管内の水を抜いてしまうか,胚盤胞移植といって採卵後5日目に胚を移植する方法を選択しています.これでもダメなら卵管を完全に切除してしまってから体外受精を行った方が妊娠率が高くなるので,この方法も考慮します.こういった工夫により,当院の卵管水腫の患者さんの体外受精での妊娠率は,他の原因で体外受精を行っている患者さんと比べても遜色のない成績が得られています.