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不妊治療について  ー 原因となる疾患

高プロラクチン血症

5.高プロラクチン血症
 プロラクチン(PRL)は卵胞刺激ホルモン(FSH)などのホルモンと同様,頭の真ん中にあるホルモン中枢の下垂体から分泌されます.多嚢胞性卵巣に合併する場合もあります.PRLの産生が亢進すると(高プロラクチン血症),症状として乳汁分泌(おっぱいをしぼると乳汁がでる)と月経不順がおきます.また,PRLは日内変動(一日のうちで値が大きく変動する)があるために,潜在性高プロラクチン血症といって,通常の血液検査では正常であっても,負荷試験で過剰反応を示すものがあり,負荷試験を行い初めて診断可能となる場合もあります.PRLが高い値をとるとなぜ月経不順がおきるのかということについては,未だに定説はありません.しかし,LH分泌をコントロールしているものに,下垂体より更に上のホルモン中枢である視床下部から分泌されるGn-RHというホルモンがあります.詳しくは説明致しませんが,高PRL状態によって,Gn-RH分泌をコントロールしているものの1つである視床下部のドーパミンという物質のturn overが亢進するために,このGn-RHの分泌が抑制されてLH分泌が低下し,排卵障害がおきるようになるという説があります.PRLの値が100ng/ml以上の高い値を取る場合には,下垂体のできもの(腫瘍,微小腺腫)ができている場合もあるので,精査が必要になります.通常治療は,パーロデル(テルロン,カバサール)という薬を内服していただければ,PRLは正常化します.副作用は嘔気・嘔吐ですが,飲みなれてくると軽減していく場合が多いです.時にPRLが,若干高めの値を取ることがありますが,排卵障害が起きていないのであれば,治療は不要と考えています.

 ここでは,PRLについてのみ話をしましたが,下垂体から分泌されているホルモンはPRLだけではありません.この他に成長ホルモン(hGH),甲状腺刺激ホルモン(TSH),副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)などの種々なホルモンが分泌されていて,これらのホルモンに上述のようなPRLと同じ様な異常がおきれば,やはりそれはFSH,LHの分泌異常を引き起こし,月経不順,無排卵状態をおこします.

 高プロラクチン血症は不妊の一因となる疾患です.しかし,上述しているように,一般的な不妊検査では不妊の原因はほとんど分かりません.この状態は,患者さんにとっても原因が分からなくて困るのですが,医者はそれ以上に困った状態になります.PRLは変動幅が大きいため,検査したときに若干の異常値をとることが多々あります.そこで,若干でも異常があれば"それみたことか.これが不妊の原因だと."医者も患者も飛びつきます.医者も自分の立場が守れるし,患者さんも原因が分かって"良かった良かった"と医者に対する信頼感も増します.しかし,高プロラクチン血症は,プロラクチンが高くなることによって月経不順がおき,排卵が不規則に,排卵の回数が減るために妊娠しにくくなるという病気です.若干PRLの値が高かろうが低かろうが,月経不順がないのであれば,それは不妊の原因ではありません.これを称して,重箱の隅の疾患と私は呼んでいます.