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不妊治療について  ー 原因となる疾患

多嚢胞性卵巣症候群

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS Polycystic Ovary Syndrome)
 月経不順のある患者さんに,よく見かけられる疾患です.症状は,月経不順(希発月経)と肥満,および卵巣の軽度の腫大を特徴としており,日本人ではあまり多くはありませんが,多毛がみられる場合もあります.排卵がほとんどおきないために不妊になります.肥満があると書きましたが,肥満ではない方にもこの病気はみられます.肥満のある方は高インシュリン血症,耐糖能異常があり,糖尿病を合併していたりします(現在糖尿病ではなくとも,将来的には糖尿病になる可能性の非常に高い予備軍であるため,内科的なfollow upが必要です).肥満のない方には高インシュリン血症はありません.

 この病気の原因はホルモンの異常です.ホルモンコントロール中枢器官の下垂体のさらに上位のコントロール器官である視床下部でのGnRHというホルモンの分泌が増すことによっておきます.病気は初経がおきた頃から起き始め20歳頃には多くははっきりと発症します.
 ホルモン検査で基礎値においてLH>FSH(当院ではd3またはd4、月経が始まって3日目ないし4日目の検査で行っています),LH-RHテスト(LHホルモンを放出するように刺激する視床下部からのホルモンであるLH-RHを注射して,注射前後でのLHの値を調べ,LHの反応の程度を調べる検査)でLHの過剰反応が認められます.高プロラクチン血症(PRLプロラクチンは乳汁をだすようにする下垂体から分泌されるホルモン,PRLが高い値をとると乳汁漏出があり排卵障害が認められます)が合併している場合もあります.卵巣にはφ5mm前後の小さな卵胞が多数認められ(これはLHホルモンの過剰分泌によって卵胞の周辺の莢膜細胞の増殖がおき,たとえて言うならば固い殻に包まれた卵胞になってしまうため,殻を破れなくなり大きくなれない卵胞が多くなるためです),前述のように全体として軽度の腫大があります.
 治療は,以前は卵巣楔状切除術といって,卵巣を一部切り取る方法が選択されていました.この方法は確かに有効性はありますが,手術による癒着のためなお一層不妊に拍車がかかってしまう場合や,卵巣を切り取る量が多すぎたため,卵がなくなっていわゆる閉経状態になってしまう場合などがあり,いい治療法とはいえません.最近では,この操作を腹腔鏡下に行い卵巣表面を焼灼する方法も行われていますが,有効性は疑問です.この疾患の治療方法は,クロミッドなどによる排卵誘発を行い,妊娠をはかるのがbestとおもわれます.しかし,クロミッドなどの内服の誘発剤では排卵が起きない場合もあり,こういった場合にはHMG-HCG療法しか有効方法はありません(排卵誘発参照).けれども,HMG療法を注意深く行っても多嚢胞性卵巣症候群の患者さんでは卵巣過剰刺激症候群は必ずおきてしまいます.

 現在当院では,クロミッドなどの内服薬に反応しない方には,sporadic HMG療法といい2日から3日に一回HMGの注射を行い,ある程度の卵胞の発育が認められたなら,患者さんによってはクロミッドを併用して排卵まで持っていくという方法を採っています.この方法では卵巣過剰症候群はほとんどおきませんし,しっかりした排卵もおきます.
 HMG療法を数回行っても妊娠にいたらない患者さんでは,体外受精による治療が副作用もおさえることができ有効と考えられます.